火災は,生活や産業など人間の日々の営みの中で発生し,その被害は人命から建造物,財産,社会的機能など多方面に及びます。被害の軽減には施設の防火性能の確保をはじめ火災時の迅速な対応・消防活動,火災保険等の活用が必要で,そのために必要な情報や技術は,各種の災害の中でも特に広い範囲に及んでいます。火災便覧初版は,こうした観点から1955年(昭和30年),戦災復興から経済成長期に入る時期に刊行され,火災に関する幅広い情報を科学の目で検証した最初の集大成として各界から好評をもって受け入れられました。
その後,研究の進展,技術の発達,社会環境の変化に応じて1984年(昭和59年)に新版が,また1997年(平成9年)には第3版が刊行され,いずれも火災研究,防災技術の開発,消防活動,施設の防災計画,火災鑑定等にあたって,科学的で信頼される基本資料として活用されてきました。第3版の刊行から約20年を経て本格的な高齢社会の到来を迎えるとともに,東日本大震災等では自然災害に伴う火災の新たな課題が浮き彫りになり,避難や広域火災,産業火災について新しい取り組みが必要になってきました。また,木材活用や電気自動車の普及等の社会情勢には,火災安全の今後に向けた新たな取り組みの必要性も窺われます。一方で,火災研究の各分野では,現象の理解に向けた新たな考え方が導入され,シミュレーション手法の進歩と普及,基本データの整備等,大きな発展が見られました。
こうした背景から,2016年(平成28年)に火災便覧第4版の編集委員会が発足し,旧第3版刊行以降の火災を巡る環境の変化を踏まえ,今後の防火対策に資するように新たな研究成果と火災統計等の情報を踏まえた内容とすべく真摯に編集を進めて参りました。本書を活用される読者の期待に十分かなうものと確信しております。
ここに本書を世に送るにあたり,編集執筆に取り組まれた編集委員会の方々及び執筆者の尽力に感謝すると同時に,本書が火災安全に関わる方々の手引きとして広く活用されることを願ってやみません。
公益社団法人 日本火災学会会長 長谷見 雄二
火災便覧が約20年ぶりに改訂し,第4版の発行となりました。
この間に火災,災害を取り巻く社会情勢は変化し,建物の使用形態の変化,高齢化社会への移行や人々の住まい方の変化など複雑多様になってきています。その中で,雑居ビル火災,福祉施設火災,大規模市街地火災,大規模物流倉庫火災などの新たな課題を内包した火災が増えています。消防機関の火災原因調査や予防技術に対する責任と期待が高まっています。
また,中越地震,東日本大震災,熊本地震などの地震災害,豪雨による水害も多く発生し,自治体などの防災部局の体制強化の必要も迫られています。これら課題に立ち向かうには基礎的な知識の活用が不可欠であり,今回の改訂で最新の燃焼や消火の理論,警防防災技術,建築物の火災安全設計,火災時の避難行動などの知見を網羅した火災便覧は,皆様の業務,研究に役立つことと信じ,ここに推薦します。
消防庁長官 黒田 武一郎
火災便覧第3版が出版されて約20年が経過した。これまでの間,火災に関しては時代の変化を写し取るような事案が発生している。東日本大震災のような未曾有の災害での火災はもとより,流通経済を代表するような大規模倉庫での火災,高齢者が入居する宿舎での火災など,まさに火災はその時代の一番弱いところをついてくる。今後も少子高齢化が加速することは明らかであり,経済状況の動向からも目を離すことはできない。当然,私たち火災から国民の生命,身体,財産を守ることを生業(なりわい)としている者にとっては,このような時代の変化に常に敏感でなくてはならない。
今回,火災便覧が改訂されたのは,まさに,時代の求めに応じたものであると思う。ベテランの技術者,研究者にあっては,自身の知識を確認するものとして読み返していただきたいし,今後,火災対策に身を投じようとする者にあっては,バイブルとして身近において欲しい。
消防庁消防研究センター所長 長尾 一郎
火災便覧第4版がこのたび刊行されることになりました。遡りますと,旧版が出版された直後の建築基準法改正において,性能規定が導入され20年が経過しようとしています。その間,性能設計が浸透して建築物に新たな空間や機能が実現されてきました。
また,公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行され,近年の木造防耐火技術の整備を背景に,学校等の公共建築物をはじめとして木造建築物の更なる需要拡大が期待されているところです。一方,従来の火災危険に加えて新たな火災危険も顕在化してきました。例えば東日本大震災で注目された津波火災や,雑居ビル火災,高齢者福祉施設火災,大規模物流倉庫の火災があげられます。
このような火災安全をめぐる過去から現在,理論から実践に至る知識・知見を網羅的に盛り込んだ本書は,今後の火災安全対策の指南にもなるものと考え,建築防災研究者・実務者の座右の書として,ここに心より推薦します。
国立研究開発法人 建築研究所理事長 緑川 光正
1960年代の後半,火災安全の世界に飛び込んだ私を,理論と応用の両面から導いてくれたのが,初版の「火災便覧」(1955年)である。火災の現象とその対策は,自然現象から社会現象や技術現象,燃焼制御から防火管理や消防戦術までを包含したもので,極めて幅の広い知識が求められる。その幅の広い領域を横につなぐ羅針盤として,大いに役立った。
ところで,火災安全の知識を「横につなぐ」だけでは不十分である。時代とともに火災は進化しており,火災対策も消防戦術も進化しなければならない。その進化に応えるために,知識を「縦につなぐ」ことが求められる。羅針盤としての「火災便覧」もまた進化しなければならない。その時代の要請に応える形で第4版が刊行されることを,大きな感銘をもって受け止めたい。
神戸大学名誉教授(消防研究センター元所長) 室﨑 益輝
●火災の基礎から実際の火災対策までの最新知識を100余名におよぶ専門家が執筆した関係者必備の宝典。
●法令・規格類の見直し,火災統計・火災年表の追記,最新研究・技術情報を網羅。
●火災科学・技術関係の基礎的な分野では,新たな研究成果を加えた。
●サンドイッチパネルの火災や木造3階建て学校実大火災実験の調査・研究成果を追加。
●火災時の避難行動に関する内容をより充実。
●広域火災・地震火災については,火災の実態・事例と対策に分けて火災学会の地震火災専門委員会が執筆。
●最新の国際化にも対応した,防火管理と防災教育・訓練。
●火災リスク,リスク・マネジメント,リスク・アセスメントについては最新の考え方に対応。
●消防行政・実務関係者,消防設備関係者
●建築行政・実務関係者,建築設備関係者
●警察・気象・林業などの関係諸官庁,出先機関の防災担当者
●地方自治体および関係機関の防災課とその担当者
●危険物・化学工業・製造業の防災関係者
●鉄道・自動車・船舶・航空関係者
●保険業界の防災課および担当者
●ホテルなど各種建築物のオーナおよび防火管理者
●弁護士・弁理士・警備保障関係者
●その他防災に関係ある団体および関係者
●報道関係者
第1章 燃焼現象 <見本PDF>
1.1 燃焼現象の分類
1.2 火災・爆発と燃焼
1.3 火災の燃焼反応
1.4 燃焼現象における基礎方程式
1.5 予混合火炎の構造と性質
1.6 爆ごう波
1.7 拡散火炎の構造と性質
1.8 着火
1.9 可燃性物質の性質と燃焼現象
1.10 危険物質の燃焼
1.11 燃焼排出物
1.12 消火の基礎
第2章 伝熱と熱気流 <見本PDF>
2.1 伝熱の機構と計算法
2.2 火災と熱および気流
2.3 火災と熱気流
2.4 建物内での煙の流動
第3章 火災現象と火災性状 <見本PDF>
3.1 火災の進展
3.2 予熱期から出火
3.3 出火から成長期
3.4 成長期?火災盛期
3.5 火災盛期?減衰期
第4章 火災の実態 <見本PDF>
4.1 火災統計
4.2 火災と気象
4.3 火災と防火の変遷
第5章 建物火災 <見本PDF>
5.1 概説
5.2 建物火災の特徴
5.3 建物構造と火災
5.4 建物用途と火災
第6章 火災時の避難行動・心理・人間生理 <見本PDF>
6.1 火災と人間心理
6.2 火災と人間生理
第7章 産業火災爆発 <見本PDF>
7.1 産業火災爆発の分類と実態
7.2 産業火災爆発の形態
7.3 各種産業火災爆発の特徴
7.4 個々の施設の安全設計
第8章 広域火災の現象 <見本PDF>
8.1 広域火災の特徴
8.2 地震時出火予測の理論
8.3 市街地火災延焼の理論
8.4 広域火災と避難
8.5 林野火災
第9章 広域火災・地震火災対策 <見本PDF>
9.1 広域火災・地震火災対策の基本的な考え方
9.2 日本における広域火災・
地震火災対策手法の変遷
9.3 地域の防火計画
9.4 地震火災の対策
9.5 津波火災の対策
第10章 その他の各種火災 <見本PDF>
10.1 電動車火災
10.2 鉄道車両火災
10.3 航空機火災
10.4 船舶火災
10.5 毒劇物施設の火災
10.6 洞道火災
10.7 廃棄物火災
第11章 感知・警報・消火設備 <見本PDF>
11.1 火災感知と警報システム
11.2 消火設備
11.3 非常電源および配線
11.4 消防用の設備等の設置・維持管理業務
11.5 認証制度
第12章 煙制御・避難の設備と計画 <見本PDF>
12.1 煙制御設備・機器
12.2 避難施設・設備・機器
第13章 防火の材料と構造 <見本PDF>
13.1 材料の燃焼とその生成物
13.2 輸送機器材料
13.3 電気部品・製品
13.4 家具・建具
13.5 衣服材料・寝具
13.6 燃焼機器の安全対策
13.7 防火材料と防火構造
13.8 耐火構造
13.9 防火区画と開口部材・区画貫通部材
13.10 被災建物の診断と補修技術
第14章 建築物の火災安全設計 <見本PDF>
14.1 火災安全設計の基本的考え方
14.2 用途別火災の特徴
14.3 目的別の火災安全設計
14.4 工学的火災安全性評価の基準と手法
第15章 消防の装備と消防戦術 <見本PDF>
15.1 消防車両
15.2 消防ロボット
15.3 消防艇
15.4 消防ヘリコプター
15.5 消防器具
15.6 消防活動用被服
15.7 消防通信設備
15.8 消防指揮
15.9 安全管理
15.10 一般火災消防活動要領
15.11 化学火災消防活動要領
15.12 特異災害消防活動要領
第16章 防火管理と防災教育・訓練 <見本PDF>
16.1 防火管理
16.2 防災教育
第17章 火災の調査と分析 <見本PDF>
17.1 火災調査の責任と権限
17.2 火災調査の基礎
17.3 調査に必要な装備・機器・分析
17.4 火災調査の方法
17.5 出火箇所の判定法
17.6 出火原因の判定法
第18章 火災実験の方法と計測技術 <見本PDF>
18.1 実験・計測技術
第19章 火災の分析と評価の方法 <見本PDF>
19.1 火災危険度の工学的評価
19.2 火災保険
19.3 産業防火の考え方
19.4 産業施設の火災・爆発危険度評価
20章 煙と避難のシミュレーション <見本PDF>
20.1 火災安全工学におけるシミュレーションの
対象と基礎概念
20.2 煙のシミュレーション
20.3 避難のシミュレーション
1. SIと常用単位間の換算
2. 火災史年表等
3. 年代毎の主な火災および強化された関連法規と
その契機となった火災
4. 火災関連規格・試験方法の種類
5. 火災,防災関係のwebサイト
6. 危険物等の物性値
第1章 燃焼現象 <見本PDF>
1.1 燃焼現象の分類
1.2 火災・爆発と燃焼
1.3 火災の燃焼反応
1.4 燃焼現象における基礎方程式
1.5 予混合火炎の構造と性質
1.6 爆ごう波
1.7 拡散火炎の構造と性質
1.8 着火
1.9 可燃性物質の性質と燃焼現象
1.10 危険物質の燃焼
1.11 燃焼排出物
1.12 消火の基礎
第2章 伝熱と熱気流 <見本PDF>
2.1 伝熱の機構と計算法
2.2 火災と熱および気流
2.3 火災と熱気流
2.4 建物内での煙の流動
第3章 火災現象と火災性状 <見本PDF>
3.1 火災の進展
3.2 予熱期から出火
3.3 出火から成長期
3.4 成長期?火災盛期
3.5 火災盛期?減衰期
第4章 火災の実態 <見本PDF>
4.1 火災統計
4.2 火災と気象
4.3 火災と防火の変遷
第5章 建物火災 <見本PDF>
5.1 概説
5.2 建物火災の特徴
5.3 建物構造と火災
5.4 建物用途と火災
第6章 火災時の避難行動・心理・人間生理
<見本PDF>
6.1 火災と人間心理
6.2 火災と人間生理
第7章 産業火災爆発 <見本PDF>
7.1 産業火災爆発の分類と実態
7.2 産業火災爆発の形態
7.3 各種産業火災爆発の特徴
7.4 個々の施設の安全設計
第8章 広域火災の現象 <見本PDF>
8.1 広域火災の特徴
8.2 地震時出火予測の理論
8.3 市街地火災延焼の理論
8.4 広域火災と避難
8.5 林野火災
第9章 広域火災・地震火災対策 <見本PDF>
9.1 広域火災・地震火災対策の
基本的な考え方
9.2 日本における広域火災・
地震火災対策手法の変遷
9.3 地域の防火計画
9.4 地震火災の対策
9.5 津波火災の対策
第10章 その他の各種火災 <見本PDF>
10.1 電動車火災
10.2 鉄道車両火災
10.3 航空機火災
10.4 船舶火災
10.5 毒劇物施設の火災
10.6 洞道火災
10.7 廃棄物火災
第11章 感知・警報・消火設備 <見本PDF>
11.1 火災感知と警報システム
11.2 消火設備
11.3 非常電源および配線
11.4 消防用の設備等の設置・維持管理業務
11.5 認証制度
第12章 煙制御・避難の設備と計画
<見本PDF>
12.1 煙制御設備・機器
12.2 避難施設・設備・機器
第13章 防火の材料と構造 <見本PDF>
13.1 材料の燃焼とその生成物
13.2 輸送機器材料
13.3 電気部品・製品
13.4 家具・建具
13.5 衣服材料・寝具
13.6 燃焼機器の安全対策
13.7 防火材料と防火構造
13.8 耐火構造
13.9 防火区画と開口部材・区画貫通部材
13.10 被災建物の診断と補修技術
第14章 建築物の火災安全設計 <見本PDF>
14.1 火災安全設計の基本的考え方
14.2 用途別火災の特徴
14.3 目的別の火災安全設計
14.4 工学的火災安全性評価の基準と手法
第15章 消防の装備と消防戦術 <見本PDF>
15.1 消防車両
15.2 消防ロボット
15.3 消防艇
15.4 消防ヘリコプター
15.5 消防器具
15.6 消防活動用被服
15.7 消防通信設備
15.8 消防指揮
15.9 安全管理
15.10 一般火災消防活動要領
15.11 化学火災消防活動要領
15.12 特異災害消防活動要領
第16章 防火管理と防災教育・訓練
<見本PDF>
16.1 防火管理
16.2 防災教育
第17章 火災の調査と分析 <見本PDF>
17.1 火災調査の責任と権限
17.2 火災調査の基礎
17.3 調査に必要な装備・機器・分析
17.4 火災調査の方法
17.5 出火箇所の判定法
17.6 出火原因の判定法
第18章 火災実験の方法と計測技術
<見本PDF>
18.1 実験・計測技術
第19章 火災の分析と評価の方法
<見本PDF>
19.1 火災危険度の工学的評価
19.2 火災保険
19.3 産業防火の考え方
19.4 産業施設の火災・爆発危険度評価
第20章 煙と避難のシミュレーション
<見本PDF>
20.1 火災安全工学における
シミュレーションの対象と基礎概念
20.2 煙のシミュレーション
20.3 避難のシミュレーション
1. SIと常用単位間の換算
2. 火災史年表等
3. 年代毎の主な火災および強化された
関連法規とその契機となった火災
4. 火災関連規格・試験方法の種類
5. 火災,防災関係のwebサイト
6. 危険物等の物性値
日本火災学会 編
・ISBN:978-4-320-07721-8 C3552
・判型:A5判 上製函入
・ページ数:1580頁
・発行年月:2018年11月上旬刊
・価格:52,800円(税込)
本書に関するお問合わせはこちら
日本火災学会 編
・ISBN:978-4-320-07721-8 C3552
・判型:A5判 上製函入
・ページ数:1580頁
・発行年月:2018年11月上旬刊
・価格:52,800円(税込)
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